【レンズ沼】Opteka 500mm F8 Preset 超望遠レンズ長期使用レビュー
Opteka 500mm F8 Preset を購入してから1年近く経過し、色々わかってきたのでレビューしてみたいと思う。

▼500mmという画角が必要な場合の選択肢
多分この記事を読んでくれている人はよくご存知かとは思うが、一眼レフ用レンズで500mmというと、「超望遠」のカテゴリになり、レンズ本体のサイズも大きく、価格も高価になってしまう。ただ、ご存知でない人のために500mmの画角が必要となった場合の選択肢の一例を以下に挙げてみる。
・Canon EF500mm F4L IS II USM→96万円

・SIGMA 500mm F4 DG OS HSM | Sports →57万円

・BORG 90FL→32万※マニュアルレンズ
・Kowa PROMINAR 500mmF5.6FL マスターレンズキット→25万※マニュアルレンズ
・SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Sports→19万円
・Tamron SP 150-600mm F5-6.3 Di VC USD G2→13万
・SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary→11万円
・Opteka 500mm F8 Preset→2万
(付属品の有無やブランドにより1万以下のものもある)
※価格は執筆時のもの。変動するので現在価格はリンク先を。
▼このレンズの概要
Opteka 500mm F8 Presetは、激安価格の一眼レフ用の単焦点超望遠レンズ。これ
私は付属品がたくさん付いているOpteka名義のものを買ったが、後述するけど様々なブランド名、OEM生産品などで同様の製品が売られており、物によっては1万円以下で入手可能。これとか
Opteka 500mm F8 Presetは、マウントが天体望遠鏡などで使われるTマウント規格で、変換アダプタを介してカメラに接続するので、様々なメーカーのカメラに取り付け可能。私の場合はCanonのEFなので、規格にあったアダプタを使ってカメラに接続している。
付属のアダプターを使っても問題なく接続はできたけど、精度があまり良くなさそうだったので、別途国産のアダプターを介したら、かなり装着感が良くなった。
焦点距離は500mm、解放がF8、最短撮影距離10m。プリセット絞り機構を備えている。
フォーカスと絞りはマニュアル(手動)操作。
▼このレンズの素性
私はOptekaブランドの製品を購入したが、以前の「JAPAN OPTICSの謎」の記事で書いたのと同様にAmazonで調べるとかなりの数のブランドから、全く同じ「500mm F8 Preset」が見つかる。
前述の記事でOptekaが韓国Samyangの海外展開ブランドであることが判明しているので、Samyangが実際の製造を行って、様々なブランド名で展開、またはOEM生産で儲けるスタイルなのだろう。つまり言い換えればどのブランドものも、本体自体は同一である可能性が極めて高いと思う。
私はまた別のJintu 420-800mm F8.3-16というレンズも購入したのだけれど、こちらも500mm F8 Presetと似たような状況で、調べた結果、韓国Samyangが実際の生産を行っている可能性が非常に高いことがわかった。
この2つのレンズは特徴が非常に似ていて、金属鏡筒、シンプルレンズ構成、同じ部品と思われるプラの三脚座など共通点がたくさんある。
そしてさらに調べると、Jintu 420-800mm F8.3-16の方の素性が先に判明。
日本の「スリービーチ社」が販売していた「VARI8000SA」。同レンズの仕様が「2群4枚構成/焦点距離420-800mm ズーム/計算F値8.3~16」・・・スペックが完全一致。外観もほぼ一緒。
Opteka 500mm F8 Presetも特徴が似ているので、さらに同社の過去製品を追っていくと、同社がOEM生産していたIDENER 500mm F8、さらにはスリービーチ社が「スリコールリライアンス」という名目で展開していた「LP500」という品番の製品を、ネット上に落ちていた昭和50年代のカタログで発見。現在のものとは微妙に構成が異なるけど、スペック、コンセプト、外観などかなり共通点が多いので、現在の500mm F8 Presetの源流でまず間違いないのではないかと思う。

↑当時のカタログより引用
▼スリービーチ社
スリービーチ社は、古い天文ファンの間では有名な「あやしい御三家」と呼ばれたメーカーの1角であることがネット情報で散見される。雑誌の巻末広告欄などに、大仰な売り文句とともに他社製品と比べてもかなりの低価格で販売する手法で展開していたようだ。(私は天体望遠鏡は買えなかったクチなので、この件については最近調べて知った次第で詳細は不明。とはいえ、この手の「あやしい」巻末広告ってなんとなく見覚えがある)
スリービーチ社は天体望遠鏡製造からカメラレンズ製造を並行し、最終的にはカメラレンズ製造に一本化した模様。簡単に言えば、天体望遠鏡レンズのノウハウを写真レンズに転用した格好のようだ。
同社は2016年頃には公式サイトを閉鎖し、社屋もほぼ同時期に取り壊されていることから、廃業したか、または違う業務形態に移行したかのいずれかだと思う(情報求む)。
公式サイトは現在でもインターネットアーカイブで確認できるんだけど、「熟練職工達の高齢化により大型製品の製造が困難」を理由に大型製品を廃番にして、小型の製品を中心に製造していたようだ。
スリービーチ 公式サイトのアーカイブ
https://web.archive.org/web/20160328173142/http://threebeach.com/index.html
スリービーチ 製品ページのアーカイブ
https://web.archive.org/web/20160328172845/http://threebeach.com/service.html
そして肝心のレンズ群のノウハウは、韓国Samyangに権利を売却したか、スリービーチ 社が権利を貸与してSamyangが製造しているか、ではないかと思われる。その証拠として、最終的に大型製品の製造が困難という理由で製造中止していた、650-1300mm F8-16というかなり大型のレンズが、やはりOpteka、JimtuなどSamyang系列ブランドかOEM品として現在でもAmazonで展開されているのが確認できる。
▼何故こんなに安いのかの推察
・暗い・・・カメラレンズは、ある意味で明るさは正義、みたいな部分があるけど、このレンズは開放F値が8からと、かなり暗い設計になっている。レンズは明るく設計するとレンズの玉のサイズが大型化し、材料費や製造難易度が跳ね上がる。
・極限までシンプル・・・現代のレンズで標準となっている、オートフォーカスや電動での絞り、手ぶれ補正など一切省かれている。ピントも絞りもレンズ側にて手動で調整する必要がある。このレンズは暗い設計とすることで、レンズ玉の直径が小さく製造コストも安く済む。
・使っているレンズの枚数が極端に少ない・・・レンズの構成枚数も4群4枚(比較対象としてEF500mm F4L IS II USMの場合は12群 16枚)と極端に少なくシンプルな構成。他のレンズが何故あれほど多数のレンズ枚数で構成されているのかというと、本体小型化やオートフォーカス、手ぶれ補正機能を取り入れるためもあるとは思うが、何より諸収差など極限まで画質を追求した結果なのだろう。一方でこのレンズは光学的な調整を必要最低限に絞って、極限までシンプルな構成にしているのだろう。(実際最新設計のレンズに比べたら諸収差がかなり多い)
・海外製・・・・(恐らく)韓国Samyangが製造しており、海外製造であるという点からも価格が抑えられているのだろう。ただでさえ挑戦的な価格だったスリービーチ時代に比べても、実際かなり安くなっている。
▼Opteka 500mm F8 Presetの実力

↑Opteka 500mm F8 Preset / Canon EOS Kiss X9i ISO400 800mm相当 F8 1/1000s
Opteka 500mm F8 Presetは、レンズ構成は4群4枚で、セミアポクロマート を謳っている。

「アクロマート」<「セミアポクロマート」 <「アポクロマート」は、レンズの色補正能力を示す語として使われているが、時代の変遷ともに意味合いも変化しているようで、厳密な意味での色補正能力として、デジタル時代の現代のレンズはほぼすべてアポクローマートの水準はクリアしている、というネット上の意見ある。
実際にそうなのかはわからないけど、少なくともキャノンのキットレンズであるEF 55-250mm F4-5.6 IS STMと比べてしまうと、色にじみも間違いなく多い。厳密に見ると、等倍拡大して凝視すると、シアン成分がわずかに輪郭で滲んでいる点と、周辺での微妙な色ズレ(倍率色収差)、被写体が逆光時に、輪郭にパープルフリンジが盛大に出ることがある(軸上色収差)。とはいえ、私が他に所有しているフィルム時代後期のTamronの廉価レンズで解放撮影した場合と比較した場合は、同じかやや多いくらいなのかな、という印象。
前述の通り、このレンズはフィルム時代にスリービーチ社設計と思われるので、その辺りの水準なのではないだろうか。
ただし、Amazonでの製品説明を読む限り、製造時のレンズコーティング技術などは徐々に刷新しているようで、当時よりは逆光などには強くなっているのかもしれないけど、正直逆光耐性は、純正レンズと比較するとかなり弱い。この辺はやはり前述のフィルム時代の廉価版Tamronレンズと同じくらいかな、という感じ。
また、オートフォーカスは使えないので、手動で合わせる必要があるが。現代のカメラのフォーカシングスクリーン はマニュアル合わせ用にはなってないので、ある意味で勘を頼りに合わせることになる。厳密なピント合わせには液晶で拡大表示を使って合わせられるけど、素早い被写体などの場合はチャンスを逃すので、やはり勘が頼り。500mmだとけっこう被写界深度が浅いので、あとで写真を見て見たらピントを外していることも良くある。ピントを外すと途端に解像度が落ちるので、これもこのレンズの難しさの一因かもしれない。
でも、完璧にピントがあって、ブレもなくISO感度も低く撮影できると、結構解像すると思う。
以下は参考として、同じ場所から、Opteka 500mm F8 Presetと、比較用にEF70-300mm f/4-5.6 IS II USMで撮影したカワセミの写真。EF70-300mm f/4-5.6 IS II USMの方は、300mmで撮影し、Opteka 500mm F8 Presetの写真と同じ大きさまで拡大した。

Opteka 500mm F8 Presetの方は絞り開放、EF70-300mm f/4-5.6 IS II USMはF8まで絞っている(条件を同じにするため)。
等倍同士で見ると、明らかにEF70-300mm f/4-5.6 IS II USMの方が解像した写真に見えるのだけれど、被写体を同じ大きさにすると、Opteka 500mm F8 Presetの方が焦点距離が長い分、わずかに鮮明に被写体を捉えていることがわかる。
LレンズではないEF70-300mm f/4-5.6 IS II USMだけど、それでも現在6万前後の価格なので、1万以下から買えるOpteka 500mm F8 Presetはかなり健闘していると思う。ただし、撮影は圧倒的にEF70-300mm f/4-5.6 IS II USMの方が楽。機能面では全く勝負にならないことは付け加えておく。
ちなみに、言うまでもないと思うけど、もしこれが純正500mmレンズとの比較だと写りの面でも全く桁違いに勝負にならないことは明白だろう。(価格差が100倍近いので比較すること自体が・・・というか持ってない、使ったことすらないので、意見も言えないけど笑)
▼プリセット機構はこのレンズには必須
プリセット絞りは、絞り値設定後、手前のリングで絞り解放と設定した絞り値の切り替えができるので、絞り値設定後、解放でピント合わせができる機構。通常カメラと連動していないマニュアルレンズは絞りを絞るとファインダー像が暗くなりピント合わせが困難になるけど、プリセット絞りでは解放でピント合わせが行えるので、だいぶ合わせやすい。
▼このレンズの難しさ
スリービーチ社の時代にこのレンズを主に販売していたのはフィルムカメラ全盛だったわけだけど、例えばISO400のフィルムで解放F8のレンズ、手持ちであればシャッター速度は1/500sとかなので、晴天下など、かなり使えるシチュエーションが限られたのではないかと想像する。それがこのレンズの評価を下げてしまった理由なのかも。
でも現在はデジタル全盛でISO感度を上げて撮影できるようになり、さらにミラーレス機ではピント支援機能なども使えるのでかなり利用できるシチュエーションも増えたのではないだろうけ。
Samyangはここまで見越してこのレンズの権利を買って製造していたのだろうか。そうだとすると、かなりの先見の明があると思う。
ところで、Amazonではかなりの数の商品が売られているのを見かけるけど、不思議とこの500mmF8レンズと、420-800mm F8.3-16、650-1300mm F8-16に関しては、実際に普段から常用し撮影した写真を目にする機会が全然ない。
「買ったので試しに撮ってみました!」というのはたまーに見かけるんだけど・・・・。
つまり、買って試しに撮って、がっかりしてタンスの肥やし・・・の流れが多いのだろうと想像する。
それはおそらくこの2つのレンズが、綺麗に撮るのが難しいレンズだからだろう。500mm(APS-Cで800mm相当)のこのレンズは、ヤワな三脚だとミラーショックだけで場合によってはブレるし、手持ちなら最低でも1/500s以上(できれば1/1000s以上)に設定しないとブレる。被写界深度も浅いので外すと途端に解像しない。
逆光とか明暗差が激しいシーンにも弱めなので、その辺りも考慮しなければならない。
でも500mmという超望遠域でこの価格は唯一無二の存在、オンリーワンなレンズであることは間違い無い。撮影していてもとても面白い。
▼作例








※本記事は予告なく随時加筆修正しています。
※2024.05追記 さらに2年半後のレビュー記事を書きました。諸元や外観、このレンズの素性など基本的な内容は本記事を、実用的な観点からの内容はこちらの記事をご覧ください。
▼500mmという画角が必要な場合の選択肢
多分この記事を読んでくれている人はよくご存知かとは思うが、一眼レフ用レンズで500mmというと、「超望遠」のカテゴリになり、レンズ本体のサイズも大きく、価格も高価になってしまう。ただ、ご存知でない人のために500mmの画角が必要となった場合の選択肢の一例を以下に挙げてみる。
・Canon EF500mm F4L IS II USM→96万円
・SIGMA 500mm F4 DG OS HSM | Sports →57万円
・BORG 90FL→32万※マニュアルレンズ
・Kowa PROMINAR 500mmF5.6FL マスターレンズキット→25万※マニュアルレンズ
・SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Sports→19万円
・Tamron SP 150-600mm F5-6.3 Di VC USD G2→13万
・SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary→11万円
・Opteka 500mm F8 Preset→2万
(付属品の有無やブランドにより1万以下のものもある)
※価格は執筆時のもの。変動するので現在価格はリンク先を。
▼このレンズの概要
Opteka 500mm F8 Presetは、激安価格の一眼レフ用の単焦点超望遠レンズ。これ
私は付属品がたくさん付いているOpteka名義のものを買ったが、後述するけど様々なブランド名、OEM生産品などで同様の製品が売られており、物によっては1万円以下で入手可能。これとか
Opteka 500mm F8 Presetは、マウントが天体望遠鏡などで使われるTマウント規格で、変換アダプタを介してカメラに接続するので、様々なメーカーのカメラに取り付け可能。私の場合はCanonのEFなので、規格にあったアダプタを使ってカメラに接続している。
付属のアダプターを使っても問題なく接続はできたけど、精度があまり良くなさそうだったので、別途国産のアダプターを介したら、かなり装着感が良くなった。
焦点距離は500mm、解放がF8、最短撮影距離10m。プリセット絞り機構を備えている。
フォーカスと絞りはマニュアル(手動)操作。
▼このレンズの素性
私はOptekaブランドの製品を購入したが、以前の「JAPAN OPTICSの謎」の記事で書いたのと同様にAmazonで調べるとかなりの数のブランドから、全く同じ「500mm F8 Preset」が見つかる。
前述の記事でOptekaが韓国Samyangの海外展開ブランドであることが判明しているので、Samyangが実際の製造を行って、様々なブランド名で展開、またはOEM生産で儲けるスタイルなのだろう。つまり言い換えればどのブランドものも、本体自体は同一である可能性が極めて高いと思う。
私はまた別のJintu 420-800mm F8.3-16というレンズも購入したのだけれど、こちらも500mm F8 Presetと似たような状況で、調べた結果、韓国Samyangが実際の生産を行っている可能性が非常に高いことがわかった。
この2つのレンズは特徴が非常に似ていて、金属鏡筒、シンプルレンズ構成、同じ部品と思われるプラの三脚座など共通点がたくさんある。
そしてさらに調べると、Jintu 420-800mm F8.3-16の方の素性が先に判明。
日本の「スリービーチ社」が販売していた「VARI8000SA」。同レンズの仕様が「2群4枚構成/焦点距離420-800mm ズーム/計算F値8.3~16」・・・スペックが完全一致。外観もほぼ一緒。
Opteka 500mm F8 Presetも特徴が似ているので、さらに同社の過去製品を追っていくと、同社がOEM生産していたIDENER 500mm F8、さらにはスリービーチ社が「スリコールリライアンス」という名目で展開していた「LP500」という品番の製品を、ネット上に落ちていた昭和50年代のカタログで発見。現在のものとは微妙に構成が異なるけど、スペック、コンセプト、外観などかなり共通点が多いので、現在の500mm F8 Presetの源流でまず間違いないのではないかと思う。
↑当時のカタログより引用
▼スリービーチ社
スリービーチ社は、古い天文ファンの間では有名な「あやしい御三家」と呼ばれたメーカーの1角であることがネット情報で散見される。雑誌の巻末広告欄などに、大仰な売り文句とともに他社製品と比べてもかなりの低価格で販売する手法で展開していたようだ。(私は天体望遠鏡は買えなかったクチなので、この件については最近調べて知った次第で詳細は不明。とはいえ、この手の「あやしい」巻末広告ってなんとなく見覚えがある)
スリービーチ社は天体望遠鏡製造からカメラレンズ製造を並行し、最終的にはカメラレンズ製造に一本化した模様。簡単に言えば、天体望遠鏡レンズのノウハウを写真レンズに転用した格好のようだ。
同社は2016年頃には公式サイトを閉鎖し、社屋もほぼ同時期に取り壊されていることから、廃業したか、または違う業務形態に移行したかのいずれかだと思う(情報求む)。
公式サイトは現在でもインターネットアーカイブで確認できるんだけど、「熟練職工達の高齢化により大型製品の製造が困難」を理由に大型製品を廃番にして、小型の製品を中心に製造していたようだ。
スリービーチ 公式サイトのアーカイブ
https://web.archive.org/web/20160328173142/http://threebeach.com/index.html
スリービーチ 製品ページのアーカイブ
https://web.archive.org/web/20160328172845/http://threebeach.com/service.html
そして肝心のレンズ群のノウハウは、韓国Samyangに権利を売却したか、スリービーチ 社が権利を貸与してSamyangが製造しているか、ではないかと思われる。その証拠として、最終的に大型製品の製造が困難という理由で製造中止していた、650-1300mm F8-16というかなり大型のレンズが、やはりOpteka、JimtuなどSamyang系列ブランドかOEM品として現在でもAmazonで展開されているのが確認できる。
▼何故こんなに安いのかの推察
・暗い・・・カメラレンズは、ある意味で明るさは正義、みたいな部分があるけど、このレンズは開放F値が8からと、かなり暗い設計になっている。レンズは明るく設計するとレンズの玉のサイズが大型化し、材料費や製造難易度が跳ね上がる。
・極限までシンプル・・・現代のレンズで標準となっている、オートフォーカスや電動での絞り、手ぶれ補正など一切省かれている。ピントも絞りもレンズ側にて手動で調整する必要がある。このレンズは暗い設計とすることで、レンズ玉の直径が小さく製造コストも安く済む。
・使っているレンズの枚数が極端に少ない・・・レンズの構成枚数も4群4枚(比較対象としてEF500mm F4L IS II USMの場合は12群 16枚)と極端に少なくシンプルな構成。他のレンズが何故あれほど多数のレンズ枚数で構成されているのかというと、本体小型化やオートフォーカス、手ぶれ補正機能を取り入れるためもあるとは思うが、何より諸収差など極限まで画質を追求した結果なのだろう。一方でこのレンズは光学的な調整を必要最低限に絞って、極限までシンプルな構成にしているのだろう。(実際最新設計のレンズに比べたら諸収差がかなり多い)
・海外製・・・・(恐らく)韓国Samyangが製造しており、海外製造であるという点からも価格が抑えられているのだろう。ただでさえ挑戦的な価格だったスリービーチ時代に比べても、実際かなり安くなっている。
▼Opteka 500mm F8 Presetの実力
↑Opteka 500mm F8 Preset / Canon EOS Kiss X9i ISO400 800mm相当 F8 1/1000s
Opteka 500mm F8 Presetは、レンズ構成は4群4枚で、セミアポクロマート を謳っている。
「アクロマート」<「セミアポクロマート」 <「アポクロマート」は、レンズの色補正能力を示す語として使われているが、時代の変遷ともに意味合いも変化しているようで、厳密な意味での色補正能力として、デジタル時代の現代のレンズはほぼすべてアポクローマートの水準はクリアしている、というネット上の意見ある。
実際にそうなのかはわからないけど、少なくともキャノンのキットレンズであるEF 55-250mm F4-5.6 IS STMと比べてしまうと、色にじみも間違いなく多い。厳密に見ると、等倍拡大して凝視すると、シアン成分がわずかに輪郭で滲んでいる点と、周辺での微妙な色ズレ(倍率色収差)、被写体が逆光時に、輪郭にパープルフリンジが盛大に出ることがある(軸上色収差)。とはいえ、私が他に所有しているフィルム時代後期のTamronの廉価レンズで解放撮影した場合と比較した場合は、同じかやや多いくらいなのかな、という印象。
前述の通り、このレンズはフィルム時代にスリービーチ社設計と思われるので、その辺りの水準なのではないだろうか。
ただし、Amazonでの製品説明を読む限り、製造時のレンズコーティング技術などは徐々に刷新しているようで、当時よりは逆光などには強くなっているのかもしれないけど、正直逆光耐性は、純正レンズと比較するとかなり弱い。この辺はやはり前述のフィルム時代の廉価版Tamronレンズと同じくらいかな、という感じ。
また、オートフォーカスは使えないので、手動で合わせる必要があるが。現代のカメラのフォーカシングスクリーン はマニュアル合わせ用にはなってないので、ある意味で勘を頼りに合わせることになる。厳密なピント合わせには液晶で拡大表示を使って合わせられるけど、素早い被写体などの場合はチャンスを逃すので、やはり勘が頼り。500mmだとけっこう被写界深度が浅いので、あとで写真を見て見たらピントを外していることも良くある。ピントを外すと途端に解像度が落ちるので、これもこのレンズの難しさの一因かもしれない。
でも、完璧にピントがあって、ブレもなくISO感度も低く撮影できると、結構解像すると思う。
以下は参考として、同じ場所から、Opteka 500mm F8 Presetと、比較用にEF70-300mm f/4-5.6 IS II USMで撮影したカワセミの写真。EF70-300mm f/4-5.6 IS II USMの方は、300mmで撮影し、Opteka 500mm F8 Presetの写真と同じ大きさまで拡大した。
Opteka 500mm F8 Presetの方は絞り開放、EF70-300mm f/4-5.6 IS II USMはF8まで絞っている(条件を同じにするため)。
等倍同士で見ると、明らかにEF70-300mm f/4-5.6 IS II USMの方が解像した写真に見えるのだけれど、被写体を同じ大きさにすると、Opteka 500mm F8 Presetの方が焦点距離が長い分、わずかに鮮明に被写体を捉えていることがわかる。
LレンズではないEF70-300mm f/4-5.6 IS II USMだけど、それでも現在6万前後の価格なので、1万以下から買えるOpteka 500mm F8 Presetはかなり健闘していると思う。ただし、撮影は圧倒的にEF70-300mm f/4-5.6 IS II USMの方が楽。機能面では全く勝負にならないことは付け加えておく。
ちなみに、言うまでもないと思うけど、もしこれが純正500mmレンズとの比較だと写りの面でも全く桁違いに勝負にならないことは明白だろう。(価格差が100倍近いので比較すること自体が・・・というか持ってない、使ったことすらないので、意見も言えないけど笑)
▼プリセット機構はこのレンズには必須
プリセット絞りは、絞り値設定後、手前のリングで絞り解放と設定した絞り値の切り替えができるので、絞り値設定後、解放でピント合わせができる機構。通常カメラと連動していないマニュアルレンズは絞りを絞るとファインダー像が暗くなりピント合わせが困難になるけど、プリセット絞りでは解放でピント合わせが行えるので、だいぶ合わせやすい。
▼このレンズの難しさ
スリービーチ社の時代にこのレンズを主に販売していたのはフィルムカメラ全盛だったわけだけど、例えばISO400のフィルムで解放F8のレンズ、手持ちであればシャッター速度は1/500sとかなので、晴天下など、かなり使えるシチュエーションが限られたのではないかと想像する。それがこのレンズの評価を下げてしまった理由なのかも。
でも現在はデジタル全盛でISO感度を上げて撮影できるようになり、さらにミラーレス機ではピント支援機能なども使えるのでかなり利用できるシチュエーションも増えたのではないだろうけ。
Samyangはここまで見越してこのレンズの権利を買って製造していたのだろうか。そうだとすると、かなりの先見の明があると思う。
ところで、Amazonではかなりの数の商品が売られているのを見かけるけど、不思議とこの500mmF8レンズと、420-800mm F8.3-16、650-1300mm F8-16に関しては、実際に普段から常用し撮影した写真を目にする機会が全然ない。
「買ったので試しに撮ってみました!」というのはたまーに見かけるんだけど・・・・。
つまり、買って試しに撮って、がっかりしてタンスの肥やし・・・の流れが多いのだろうと想像する。
それはおそらくこの2つのレンズが、綺麗に撮るのが難しいレンズだからだろう。500mm(APS-Cで800mm相当)のこのレンズは、ヤワな三脚だとミラーショックだけで場合によってはブレるし、手持ちなら最低でも1/500s以上(できれば1/1000s以上)に設定しないとブレる。被写界深度も浅いので外すと途端に解像しない。
逆光とか明暗差が激しいシーンにも弱めなので、その辺りも考慮しなければならない。
でも500mmという超望遠域でこの価格は唯一無二の存在、オンリーワンなレンズであることは間違い無い。撮影していてもとても面白い。
まとめ
▼このレンズのポジティブ要素
・とにかく安い!安いので万一壊れた時の精神的経済的損失が軽い、
修理するなら新しいのに買い換えられる値段!
・綺麗に撮影するのが難しい故に、綺麗に撮れた時の喜びは計り知れない。こういう楽しみ方ができる人はベストバイ。
・500mm(Canon APS-Cなら800mm相当)の超望遠域を気軽に体験できる!
・ちゃんと500mmの画角で写る!(当たり前だけど、これが重要)
・2xテレコン付きを買うと一応1000mm(1600mm相当)で撮影できる
・500mmレンズとしてはそこそこ小型軽量
・(華奢な人だと厳しいけど)一応手持ち撮影も可能
・条件が良ければそこそこ綺麗に写る
・鏡筒自体は金属製で、作りはしっかりしている
・絞り機構が付いている
(似たレンズの420-800mmや650-1300mmは絞り機構なし)
・中央はそこそこ解像するので野鳥の撮影には似たレンズの「420-800mm」よりもこちらの方が向いている
▼このレンズのネガティブ要素
・「手軽に」「素早く」「簡単に」撮りたい人は完全にこのレンズは向いていない。
・手持ちだとシャッター速度が最低でも1/500s以上が必要
→綺麗に撮るのが難しい
・暗い(開放F8)ので、ISO感度が跳ね上がりやすい。
→綺麗に撮るのが難しい
・被写界深度が浅く、特に遠方はピントが結構シビア
→綺麗に撮るのが難しい
・最短撮影距離が10mと近づけない。これは最大の欠点かも。
近くの木の上の鳥など狙っても近すぎる場合がまぁまぁある。
・500mm(800mm相当)なので遠方を撮りたくなるが、この画角だと
大気の揺らぎとか靄とか霞の影響をかなり受けるので遠くほど綺麗に写すのが
難しい。
・ISO感度を下げるには三脚は必須なので荷物が増える
(とはいえ大砲&大型三脚に比べれば・・・)
・でも三脚座がプラスチック製で華奢で強度に不安・ブレやすい
・綺麗に撮れた場合でも、現代の最新レンズと比較すると収差や色ズレが多い。
特に条件が揃うと現像時の修正困難なほど盛大にパープルフリンジが出る。
・ボケ味があまり綺麗ではない。色ボケ(軸上色収差)が多め。
・金属鏡筒なので、冬場内部結露しやすそう→カビとか曇りが発生しやすそう
→保管方法に気をつける必要があるかも
・白レンズとか高級レンズユーザーからは「お遊びか」と、
軽く軽蔑の眼差しで見られるかも。
(というか私は本気の気合い入れたお遊びなので全然OK )
▼作例
※本記事は予告なく随時加筆修正しています。
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